2019年3月13日。産創館にて同友会経営本部による定例会議が行われました。その会議の後、実践報告会が行われます。加盟企業の方が実践報告を行い、幾つかのグループに分かれて、テーブル討論を行います。発表者の話を基に、テーブルのリーダーが参加者の意見を聞きながら討論へと導いていきます。話を聞くだけではなく、自分たちの意見を出し合う事で気付きを深めていくことが、この会の魅力ともいえます。そういう意味でも異業種交流を行うことは大切といえます。
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今回の発表者(実践報告者)は堺市でビルメンテナンス業をされている株式会社CareMasterの上田社長です。起業されてから16年。東京に支社を広げつつ、社員を育てる事の苦労について話してくれました。
特に気を引いたのは提供科価格の推移です。
社長が起業されたH14年最低賃金は、703円(大阪府)でした。それがいまでは、936円。比率にして33%の上昇となります。16年という時間の中での233円の上昇が高いか低いかは横に置いておくとして、府が定める基準(都道府県毎で違うので…)は着実に上がっていっています。
人件費の上昇。それはある意味、国の背策としての流れであり、会社として望んでそうしているわけではありません(もちろん、社員に対して給料を上げていくのは普通です)。会社の実情に関係なく、最低の基準が定められています。企業である以上、毎年、しっかりと引き上げられるというわけではありませんが(赤字になることもあります)、法による基準であれば否応なく基準を守る必要があります。
余談になりますが…
時給ベースで233円の上昇、週休2日として月計算すると40,076円の上昇。単純に16年でみると2,500円の昇給となります。
月額で試算すると120,916円が160,992円に、時代背景からすると決して高い水準ではありませんが、低い水準でもありません。平成30年4月高校新卒給与平均172000(大阪)【最高額 保安業務209,000円】ということからみても…企業は、府の基準に対して、人材確保の観点からすると、幾分かの努力を求められていることになります。


社長によると業界的に、仕事に応じた社員の貸し借りがあるそうですが、その時の費用は15,000円/日だったそうです。この費用、16年たってみると何と33%増しになるわけもなく、13000円/日という状況になっているそうです。実質的な減収が発生します。
これはビルメンテナンス業に限った事ではなく、色々な業態でも起きている話題だと感じます。
無論、福祉業界にもいえます。
支援費単価、介護給付費単価が下がる一方で(総額費用は増大気味ですが…)社員人件費は上がっていきます。法で定められている基準を守るだけで、収支は赤字になっていく現状がここにあります。それに対応できずに、事業を撤退する同業者がいるのも頷けます。

ちなみにですが…社長の会社におけるエアコンクリーニングの単価ですが、企業当時25,000円/1台がいまでは15,000円/1台…こちらでも減収の原因が発生します。同じように仕事をするだけでは、経営は圧迫されることになります。
そこで考えたのが、プロフェッショナルとしての振る舞いになります。同じ仕事をするにしても、そこに付加的価値を追加することで、職務の拡大と得意先の増加を求めていくことに繋がていくことを大事にします。プロとして、売り上げを挙げればいいのではなく、必要に応じた提案をすることで信頼をえることで、顧客の要望に応じていくことを、社員に繰り返し伝えてきたそうです。
誰でもできる仕事からの脱却、顧客を見る眼力…求めるモノは数多くありますが、鼓舞したところで現状はそれほど変わりません。繰り返し、話をすることで、気付いてくれることを待つという根気のいる時間もあったようです。
その結果…社員の一人一人がスキルアップの大切に気付き、資格の習得を自ら行ってくれるようになってきたそうです。
いまだけの利益を見るのではなく、未来につなげる対応を、そして事象を見る力が将来を支える力に繋がるのかもしれません。

そんな話を受けて、行われたテーブル討論。
話の中心には、費用対効果の在り方でした。収入と支出、いま求める事と未来に求める事、守るべき期日と譲歩してもらえる期日、そして、単価は業界的に決まっているだけであり、確定された単価はそれほど存在していない事などなど…色々と勉強になる時間でした。
業界は違えど色々とヒントがある勉強会でした。